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2016/05/29

へルマンヘッセ 「アウグストゥス」


〜孤独感と空虚で愛の痕跡など1つも見つからない人生〜

もしこんな人生を歩かされたらあなたはどうしますか?




へルマンヘッセと言えば車輪の下が有名ですがまだ学生の頃だったかに読んでみようと買ったのはいいけれど
最初の数ページで何度もリタイアし結局は読まなかった本でした。
先日図書館でヘッセの短編集を見つけ読んでみました。
とても読みやすいのですが、緻密な描写に手のこんだ刺繍の上をなぞっているような感覚になりました。

その一篇にアウグストゥスというお話がありました。
内容
若い未亡人は身ごもっていた。隣人の老人は少し変わっていた。互いにお隣同士支えあっていた。
老人は生まれてきた男のこにアウグストゥスと名付けた。
そして老人はこの子に1つ願い事をかけなさい。その願いをかなえようと言った。
母親は誰もがこの子を愛さずにはいられないように願うわと言った。
しかしこの魔法は逆に呪いとなってしまった。アウグストゥスには沢山のスポンサーや愛人、恋人ができた。彼は美しかった。
その美しさに魅了され人生を台無しにされた女も沢山いた。
彼は人を心から愛することを知らない人生を送り、そのうちに母親は亡くなる。
彼は孤独感、空虚で荒れ果てた情態で愛の痕跡など何一つ見つからない人生に嫌気が差し服毒自殺を図ろうとした瞬間にあの老人が現れる。
今度はお前の願いを1つ叶えてやろう。という。
アウグストゥスは僕のためにならなかった魔法を取り払い人を愛せるようにしてください。
と頼んだ。

今まで利用した全てのひとが押し掛けかれを刑務所に送ってしまった。
刑務所から出たアウグストゥスはもう以前の美しい姿はなくなっていた。
ものごいをしながら生活をする彼は世の中の人々を観察した。
そして子供のためにドアを開けてあげ、身体の不自由な人に手を差しのべ、誰にでも挨拶をした。
彼は気づいた。
傲慢な暮らしの中にありながらも窒息しそうなほどの空虚感と孤独はきれいに消え失せ全ての人が愛するべき存在であると。
学校へ向かう子供たちの歓声、病人のために馬車を走らせる医者の姿。
この世は十分に素晴らしく愛すべき場所だと。

老人になったアウグストゥスは昔母親と住んでいた家にたどり着く。隣人のあの魔法使いは驚くほど変わった様子がなく生きていた。
アウグストゥスは昔子供だった頃にそうしたように、暖炉の前に座り老人のひざに寄りかかり、きらびやかな不思議な
音楽にあわせて舞う天使たちを見上げて最後の眠りにつく。
アウグストゥスはいう。
僕は今日も悪さをしてお母さんを泣かしてしまったの。お願いだからお母さんに話して僕がまたおりこうになるって言って欲しいんだ。
そうしてくれる?
老人はいう。ああ、そうするさ、大丈夫。お母さんはお前を愛しているから。



このお話を読んですぐに気づく。これはフアンタジーなんだと。
老人の魔法はいいほうに効かなく一人の少年の人生を人を愛することのできない不幸なものにしてしまったが
私ならその事実に気づいた時点で母にもこの魔法使いにも怒鳴りかかると思うのです。
私の人生どうしてくれたんだ!と。
しかしアウグストゥスはすべてを受け入れています。
ここには母親とこの魔法使いを愛していたという事実があったからではないでしょうか?
人を愛することのできない人生だったとは言い切れないのではないかと思うのです。
彼の人間性はあまり細かく書かれていませんが本当は我慢強く、利口な人だったのではないかと。
だから魔法使いももう一度彼の望む願いを叶えてやろうと彼の前に現れたのだと思うのです。
彼の母親も魔法使いも彼を心から愛していたのにそれが裏目に出てしまいましたが、どんな魔法をかけても
結局は逆効果になったのではないでしょうか?
お金に恵まれますように。
食べ物に困りませんように。
賢い知恵を授かりますように。
こんな願いごとは全ては逆の作用をも呼び込んでしまう。
皮肉ですがそんなおちがあるのが事実だと思います。

アウグストゥスが生まれて、自立し、また家にたどり着いて最期を迎えるまでの長い長い人生を私も一緒に旅したような気分にさせて
くれるそんなお話でした。
そしてあの少し変わった魔法使いの老人は今でもひっそりと暮らしていて、また隣に誰かが越して来るのを待ちわびているのではないかしらと思うのです。



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